ロックする親父たち
工藤由美のニャンとも音楽雑記帳
(ADLIB 2005年11月)
同居人は40代半ばを過ぎた今も現役のアマチュア・サッカー・プレイヤーだが、その仲間の一人に、いい年してロック・バンドを続けている人がいる。地道にライブ活動も続けていて、自主制作ながらCDも2枚リリースしている。それを聞く限り、ヴォーカル担当の彼の歌唱力はなかなかのもので、レッド・ツェッペリンのロバート・プラントを髣髴とさせるソプラノがバンドの個性を形作っている。
そのバンドが東京のANAホテルが主催するオヤジ・ロック・フェスティバルに応募したところ、厳選なるテープ審査の結果、見事、全国から出場する10組のひとつに選ばれたというので、応援に行くことになった。ところが当日になって同居人はサッカーの試合が重なり、私一人で出かけなければならなくなった。ジャズ評論家の私がどうしてアマチュア・ロック・バンドなんか見に行かなければいけないのかと最初は不機嫌だったが、結果的にはものすごく面白いイベントだった。
ディープ・パープルのカバー、ミック・ジャガーのようにしなやかな身のこなしで会場をのせる親父ヴォーカル、69歳のヴォーカルを軸にしたおしゃれなオールデイズ・バンド、エレクトリック琴をフィーチャーしたバンド、アメリカ大使館の人種ミックスの迫力あるソウル・バンド、めちゃうまのビートルズ・コピーバンド、ギター2本でクラプトンのブルースをロックさせたデュオなど、実にバラエティに富んでいて、飽きない。
親父バンドというだけに、それなりに年季が入っているから、どれもかなり聞かせるのである。ちょっとはにかみながらのパフォーマンスも堂にいっている。結構笑える場面もあって、イベントとしてはかなり完成度の高いものになった。
その上、夏休みということもあってほとんどが家族連れ。ステージでロックする父ちゃんを子供たちが応援する様子はとても微笑ましく、こちらまで温かい気持ちになった。
すばらしいと思ったのは、このイベント、ANAホテルのロック好きのおじさんたちが企画し、実現させたこと。自分たちが考えた企画を実現させる社員のパワーも、それを受け止めて形にするANAホテルの風土もすばらしい。
友達のバンドは、出場チームの中でも数少ないオリジナルで勝負したのだが、PAシステムの不具合でヴォーカルがハウリングし、一番の売りである歌詞がオーディエンスに伝わらなかった。実は、友人は東大卒でNTTの管理職を務めるエリートなのだが、それだけにフュージョンに近い凝ったつくりにしたのも、ロックという観点から見るとパワー不足となり、裏目に出た。環境が整っていたら、かなりいい線いったのではないかと思うだけに、入賞できなかったのは残念だったが、後で聞いたら、親父ロックは静かなブームだそうで、今回も応募多数だったらしい。つまり桧舞台に立てただけでも「すごい」ってこと。それより何より、いくつになっても音楽しているって素敵なことだと思った。
くどうゆみ:音楽ライター
窓を開けっ放しにしていたら、巨大な蜂が飛んできてレースのカーテンにはまり込んだ。恐る恐る近づくと、これぞ本家本元のスズメバチ。イエロージャケッツの名前を調べたとき写真を見ていたのですぐにわかった。逃げるが勝ちとばかりに家を出て数時間、買い物から戻ると蜂の姿は消えていた。怖ッ!。